2020年10月28日水曜日

オリーブオイルのノンフィルター(無濾過)とフィルターの違い

オリーブオイルのヌーヴォー(ノヴェッロ)は、少しとろりとしたものを感じることがあります。これは、澱(非常に細かい果実)を含むためです。オリーブの風味を最大限に残すために、フィルターをしていないか、最小限で済ませています。

高品質なオリーブオイルは、サラサラしているものだと思われている方にとっては、このような食味に、驚かれることがあります。劣化したオイルは、油っぽくなったり、黄色が強くなったり、濁っていたり、トロっとしてくる、という情報を見たからだそうです。

ヌーヴォーオイルについては、製法にもよりますが、若干の濁りやとろみがあるものです。オリーブを搾ったままの風味 "オリーブジュース" を楽しんでいただくものだからです。ジュースといっても、実際には、果物のジュースのようになっているのではありません。ゴクゴクと多量に飲むものでもありません。オリーブは油分が多い果実ですので、油分と水分を分離してオイルになるのです。(オリーブがオリーブオイルになるまでには、実際にはただ搾るだけではなく、様々な工程があります)

オリーブオイルの風味を決める要素としては、オリーブの品種ということ以外には、フィルターの方式にもよります。

一般的なオリーブオイルは、フィルターで澱をなるべくなくして、品質を一定にし、長期間保存できるようにします。(だからこそ、そうではないヌーヴォーオイルは、年に一度のお楽しみで、貴重なものとなります)

ノンフィルターオイルといっても、搾ったオイルをそのまま瓶詰めするものや(このようなオイルは、搾油所で搾ったそのままを試飲するようなもので、市場に出回ることはほとんどないそうです)、ノンフィルターの一種で、デカンティングという方法もあります。

搾ったオイルをタンクに入れて静置させてからしばらくすると、下のほうに澱が沈殿してきます。この時、上澄みのオイルを取得して、別のタンクに移し替えて、また沈殿ができるのを待ちます。そしてまた上澄み部分を取得して、というふうに澱を取り除いていきます。

このような方法をデカンティングといい、フィルター装置を使わずに、澱だけを取り除きながら、オリーブ本来の風味を残すことができます。こうすることで、ノンフィルターでありながら、サラサラした感じとなり、品質保持期間(つまり賞味期限)も長くとることができるようになります。ヌーヴォーではない通常品でも、ノンフィルターとされているものがありますが、このような方法で実現しています。

フィルターするか、フィルターしないかは、どのような風味のオイルを作るかという生産者やメーカーの好みであって、どちらが優れているかということではないそうです。(消費者の好みもありますね)

因みに、ヌーヴォーでも、品質保持の観点から、ある程度のデカンティングはされるところが多いです。その期間や頻度はそれぞれです。

当店で取り扱いの天然醸造酢で、静置発酵 上澄み無濾過がありますが、同じようなものです。澱引き剤、濾過剤は使用せず、濾過をしたのと同じような効果で、本来の風味をそのまま残しています。

ノンフィルター、フィルター、デカンティング、それぞれに良さがあります。

今回はふれていませんが、オイルの取り出し方として、伝統的な圧搾方法、遠心分離法、パーコレーション法、そして、近年の最新式として、水と油の表面張力の差で、熱を加えずにオイルを抽出するシノレア式法などがあります。これらは、フィルターするか、しないかの判断にも関わってくることだそうで、またの機会にご紹介したいと思います。